がん薬物療法認定薬剤師
日本人の死因の第一位である「がん」ですが、がん治療の研究が進むにつれ、
がんの薬物療法についてのより専門的な知識・経験を持った薬剤師が必要であると
考えられるようになり、「がん薬物療法認定薬剤師」の認定制度が生まれました。
一般社団法人日本病院薬剤師会によって運用され、がん疫学の知識、
がんの診断・病期分類、臨床研究、抗がん剤の薬理作用や、治療のガイドライン、
麻酔薬であるオピオイドの薬理作用や副作用の対処法、カウンセリングに至るまで、
がんの薬物療法に関わる幅広い知識の習得と、豊富な実務経験を認定する制度です。
がん薬物療法認定薬剤師の仕事のひとつは、
がん治療の詳細な計画書である「レジメン」に精通し、医師や看護師とともに
レジメンの内容について精査を行い、
医療事故の防止に努めることです。
その他にも、治療スケジュールや薬の副作用についての患者さんへの説明、
薬の投与量チェック、副作用管理を行い、
患者さんが安心して治療を受けられる環境を作るのも、
がん薬物療法認定薬剤師の役割です。
このような仕事と役割を果たしていくためには、
常に世界的視野で最新の情報を収集、分析し、抗がん剤についての正しい知識を医師、
看護師に対して提供していく必要があり、常に学び続けるという姿勢が大切です。
がん治療の現場で薬剤師に求められる知識や技術はますます高度化しており、
がん薬物療法認定薬剤師となって医療の現場に立つことは、
責任も重く、大変やりがいのある仕事であるといえます。
がん薬物療法認定薬剤師の仕事に憧れ、認定を目指す場合、
相応な知識の習得や学会での論文発表、薬剤管理指導の実績の他に、
学会の認定する施設で3年以上がん薬物療法に従事することも必要です。
長い目で自分のキャリアプランを立て、認定までの職場、
認定後の職場についてもイメージしておく必要があると言えるでしょう。
がん薬物療法認定薬剤師試験は、認定薬剤師制度のなかでは、難易度の高い試験です。
例年の合格率は50%前後。薬剤師として優秀な人が、準備万端で受験しても
二人に一人しか合格出来ないのですから、どれだけハードルが高いかということです。
逆にいえば、認定されることの価値はそれだけ高いということです。
がん医療は著しく進歩し、抗がん剤治療を受ける患者数も年々増加しています。
近年では、抗がん剤による吐き気などに対し予防薬も使用できるようになり、
また、がん細胞のみに特異的に作用し副作用が比較的少ない
分子標的治療剤が次々と登場してきました。
以前に比べれば、治療を受ける患者さんの身体的な負担は減ってきた印象がありますが、
一方で個々の患者さんの治療内容や生活環境に応じて、
適切な薬剤選択や副作用予防・対策を行うことがより重要となってきています。
参考ページ:日本病院薬剤師会