薬剤師法
第1章 総則 (第1条)
第2章 免許 (第2条−第10条)
第3章 試験 (第11条−第18条)
第4章 業務 (第19条−第28条の3)
第5章 罰則 (第29条−第33条)
第1章 総則
(薬剤師の任務)
第1条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
第2章 免許
(免許)
第2条 薬剤師になろうとする者は、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
(免許の要件)
第3条 薬剤師の免許(以下「免許」という。)は、薬剤師国家試験(以下「試験」という。)に合格した者に対して与える。
(絶対的欠格事由)
第4条 未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない。
(相対的欠格事由)
第5条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者
(薬剤師名簿)
第6条 厚生労働省に薬剤師名簿を備え、登録年月日、第8条第1項又は第2項の規定による処分に関する事項その他の免許に関する事項を登録する。
(登録及び免許証の交付)
第7条 免許は、試験に合格した者の申請により、薬剤師名簿に登録することによつて行う。
2 厚生労働大臣は、免許を与えたときは、薬剤師免許証を交付する。
(意見の聴取)
第7条の2 厚生労働大臣は、免許を申請した者について、第5条第1号に掲げる者に該当すると認め、同条の規定により免許を与えないこととするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知し、その求めがあつたときは、厚生労働大臣の指定する職員にその意見を聴取させなければならない。
(免許の取消し等)
第8条 薬剤師が、成年被後見人又は被保佐人になつたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消す。
2 薬剤師が、第5条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 3年以内の業務の停止
三 免許の取消し
3 都道府県知事は、薬剤師について前2項の処分が行なわれる必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に具申しなければならない。
4 第1項又は第2項の規定により免許を取り消された者(第5条第3号若しくは第4号に該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつた者として第2項の規定により免許を取り消された者にあつては、その取消しの日から起算して5年を経過しない者を除く。)であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのか適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第7条の規定を準用する。
5 厚生労働大臣は、第1項、第2項及び前項に規定する処分をするに当たつては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。
6 厚生労働大臣は、第1項又は第2項の規定による免許の取消処分をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め、当該意見の聴取をもつて、厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。
7 行政手続法(平成5年法律第88号)第3章第2節(第25条、第26条及び第28条を除く。)の規定は、都道府県知事が前項の規定により意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において、同節中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と、同法第15条第1項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と、同条第3項(同法第22条第3項において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」と、「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と、「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と、同法第16条第4項並びに第18条第1項及び第3項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と、同法第19条第1項中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とあるのは「都道府県知事が指名する職員」と、同法第20条第1項、第2項及び第4項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と、同条第6項、同法第24条第3項及び第27条第1項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
8 厚生労働大臣は、都道府県知事から当該処分の原因となる事実を証する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には、速やかにそれらを当該都道府県知事あて送付しなければならない。
9 都道府県知事は、第6項の規定により意見の聴取を行う場合において、第7項において読み替えて準用する行政手続法第24条第3項の規定により同条第1項の調書及び同条第3項の報告書の提出を受けたときは、これらを保存するとともに、当該調書及び報告書の写しを厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、当該処分の決定についての意見があるときは、当該写しのほか当該意見を記載した意見書を提出しなければならない。
10 厚生労働大臣は、意見の聴取の終結後に生じた事情に鑑み必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、前項前段の規定により提出された調書及び報告書の写し並びに同項後段の規定により提出された意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができる。行政手続法第22条第2項本文及び第3項の規定は、この場合について準用する。
11 厚生労働大臣は、当該処分の決定をするときは、第9項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌してこれをしなければならない。
12 厚生労働大臣は、第2項の規定による業務の停止の命令をしようとするときは、都道府県知事に対し、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め、当該弁明の聴取をもつて、厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる。
13 前項の規定により弁明の聴取を行う場合において、都道府県知事は、弁明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて、当該処分に係る者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 第2項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
二 当該処分の原因となる事実
三 弁明の聴取の日時及び場所
14 厚生労働大臣は、第12項に規定する場合のほか、厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えて、医道審議会の委員に、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては、前項中「前項」とあるのは「次項」と、「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と読み替えて、同項の規定を適用する。
15 第13項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通知を受けた者は、代理人を出頭させ、かつ、証拠書類又は証拠物を提出することができる。
16 都道府県知事又は医道審議会の委員は、第12項又は第14項前段の規定により弁明の聴取を行つたときは、聴取書を作り、これを保存するとともに、報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない。この場合において、当該処分の決定についての意見があるときは、当該意見を報告書に記載しなければならない。
17 厚生労働大臣は、第6項又は第12項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては、都道府県知事に対し、あらかじめ、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 当該処分に係る者の氏名及び住所
二 当該処分の内容及び根拠となる条項
三 当該処分の原因となる事実
18 第6項の規定により意見の聴取を行う場合における第7項において読み替えて準用する行政手続法第15条第1項の通知又は第12項の規定により弁明の聴取を行う場合における第13項の通知は、それぞれ、前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。
19 第6項若しくは第12項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合又は第14項前段の規定により医道審議会の委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については、行政手続法第3章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。
(再教育研修)
第8条の2 厚生労働大臣は、前条第2項第1号若しくは第2号に掲げる処分を受けた薬剤師又は同条第4項の規定により再免許を受けようとする者に対し、薬剤師としての倫理の保持又は薬剤師として必要な知識及び技能に関する研修として厚生労働省令で定めるもの(以下「再教育研修」という。)を受けるよう命ずることができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による再教育研修を修了した者について、その申請により、再教育研修を修了した旨を薬剤師名簿に登録する。
3 厚生労働大臣は、前項の登録をしたときは、再教育研修修了登録証を交付する。
4 第2項の登録を受けようとする者及び再教育研修修了登録証の書換交付又は再交付を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
5 前条第12項から第19項まで(第14項を除く。)の規定は、第1項の規定による命令をしようとする場合について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。
(調査のための権限)
第8条の3 厚生労働大臣は、薬剤師について第8条第2項の規定による処分をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、当該事案に関係する者若しくは参考人から意見若しくは報告を徴し、調剤録その他の物件の所有者に対し、当該物件の提出を命じ、又は当該職員をして当該事案に関係のある薬局その他の場所に立ち入り、調剤録その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をしようとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(届出)
第9条 薬剤師は、厚生労働省令で定める2年ごとの年の12月31日現在における氏名、住所その他厚生労働省令で定める事項を、当該年の翌年1月15日までに、その住所地の都道府県知事を経由して厚生労働大臣に届け出なければならない。
(政令等への委任)
第10条 この章に規定するもののほか、免許の申請、薬剤師名簿の登録、訂正及び削除並びに免許証の交付、書換交付、再交付及び返納に関し必要な事項は政令で、第8条の2第1項の再教育研修の実施、同条第2項の薬剤師名簿の登録並びに同条第3項の再教育研修修了登録証の交付、書換交付及び再交付に関して必要な事項は厚生労働省令で定める。
第3章 試験
(試験の目的)
第11条 試験は、薬剤師として必要な知識及び技能について行なう。
(試験の実施)
第12条 試験は、毎年少なくとも1回、厚生労働大臣が行なう。
2 厚生労働大臣は、試験の科目又は実施若しくは合格者の決定の方法を定めようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。
(薬剤師試験委員)
第13条 試験に関する事務をつかさどらせるため、厚生労働省に薬剤師試験委員を置く。
2 薬剤師試験委員に関し必要な事項は、政令で定める。
(試験事務担当者の不正行為の禁止)
第14条 薬剤師試験委員その他試験に関する事務をつかさどる者は、その事務の施行に当たつて厳正を保持し、不正の行為がないようにしなければならない。
(受験資格)
第15条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。
一 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学において、薬学の正規の課程(同法第87条第2項に規定するものに限る。)を修めて卒業した者
二 外国の薬学校を卒業し、又は外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が前号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定したもの
(受験手数料)
第16条 試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
2 前項の規定により納めた手数料は、試験を受けなかつた場合においても、返還しない。
(不正行為の禁止)
第17条 試験に関して不正の行為があつた場合には、その不正行為に関係のある者について、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。この場合においては、なお、その者について、期間を定めて試験を受けることを許さないことができる。
(省令への委任)
第18条 この章に規定するもののほか、試験の科目、受験手続その他試験に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第4章 業務
(調剤)
第19条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。
一 患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合
二 医師法(昭和23年法律第201号)第22条各号の場合又は歯科医師法(昭和23年法律第202号)第21条各号の場合
(名称の使用制限)
第20条 薬剤師でなければ、薬剤師又はこれにまぎらわしい名称を用いてはならない。
(調剤の求めに応ずる義務)
第21条 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
(調剤の場所)
第22条 薬剤師は、医療を受ける者の居宅等(居宅その他の厚生労働省令で定める場所をいう。)において医師又は歯科医師が交付した処方せんにより、当該居宅等において調剤の業務のうち厚生労働省令で定めるものを行う場合を除き、薬局以外の場所で、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設(獣医療法(平成4年法律第46号)第2条第2項に規定する診療施設をいい、往診のみによつて獣医師に飼育動物の医療業務を行わせる者の住所を含む。以下この条において同じ。)の調剤所において、その病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設で医療に従事する医師若しくは歯科医師又は獣医師の処方せんによつて調剤する場合及び災害その他特殊の事由により薬剤師が薬局において調剤することができない場合その他の厚生労働省令で定める特別の事情がある場合は、この限りでない。
(処方せんによる調剤)
第23条 薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
2 薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
(処方せん中の疑義)
第24条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。
(調剤された薬剤の表示)
第25条 薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤した薬剤の容器又は被包に、処方せんに記載された患者の氏名、用法、用量その他厚生労働省令で定める事項を記載しなければならない。
(情報の提供及び指導)
第25条の2 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
(処方せんへの記入等)
第26条 薬剤師は、調剤したときは、その処方せんに、調剤済みの旨(その調剤によつて、当該処方せんが調剤済みとならなかつたときは、調剤量)、調剤年月日その他厚生労働省令で定める事項を記入し、かつ、記名押印し、又は署名しなければならない。
(処方せんの保存)
第27条 薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなつた処方せんを、調剤済みとなつた日から3年間、保存しなければならない。
(調剤録)
第28条 薬局開設者は、薬局に調剤録を備えなければならない。
2 薬剤師は、薬局で調剤したときは、調剤録に厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。ただし、その調剤により当該処方せんが調剤済みとなつたときは、この限りでない。
3 薬局開設者は、第1項の調剤録を、最終の記入の日から3年間、保存しなければならない。
(薬剤師の氏名等の公表)
第28条の2 厚生労働大臣は、医療を受ける者その他国民による薬剤師の資格の確認及び医療に関する適切な選択に資するよう、薬剤師の氏名その他の政令で定める事項を公表するものとする。
(事務の区分)
第28条の3 第8条第6項及び第10項前段、同条第12項及び第13項(これらの規定を第8条の2第5項において準用する場合を含む。)、第8条第7項において準用する行政手続法第15条第1項及び第3項(同法第22条第3項において準用する場合を含む。)、第16条第4項、第18条第1項及び第3項、第19条第1項、第20条第6項並びに第24条第3項、第8条第10項後段において準用する同法第22条第3項において準用する同法第15条第3項並びに第9条の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする。
第5章 罰則
第29条 第19条の規定に違反した者(医師、歯科医師及び獣医師を除く。)は、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第30条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第8条第2項の規定により業務の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、業務を行つたもの
二 第22条、第23条又は第25条の規定に違反した者
第31条 第14条の規定に違反して故意若しくは重大な過失により事前に試験問題を漏らし、又は故意に不正の採点をした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第32条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
一 第8条の2第1項の規定による命令に違反して再教育研修を受けなかつた者
二 第8条の3第1項の規定による陳述をせず、報告をせず、若しくは虚偽の陳述若しくは報告をし、物件を提出せず、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第9条の規定に違反した者
四 第19条の規定に違反した医師、歯科医師又は獣医師
五 第20条の規定に違反した者
六 第24条又は第26条から第28条までの規定に違反した者
第33条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条第2号又は第6号(第27条又は第28条第1項若しくは第3項に係る部分に限る。)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、前条の罰金刑を科する。
参考サイト:日本法令索引・電子政府総合窓口等、附則については省略
薬剤師法(昭和35年法律第146号)は、追加や削除など改正される場合があります。